これ、けっこう深刻な話。
あたしの頭の中には、いつだって母がいる。いや、いるというより「居座ってる」と言ったほうが正しい。
考えなきゃいい、気にしなきゃいい。そんなの自分が一番わかってる。でもね、考えまいとすると、余計に出てくるの。心理学でもそうでしょ?「ピンクのゾウを思い浮かべないで」って言われたら、もうピンクのゾウが頭に浮かんでるってやつ。あれです。
あぁ、あたしは生まれ育った環境で、こういう思考回路になったんだなと、今ならわかるのよ。たくさん学んだからね。
少し前に「毒親」という言葉が話題になったとき、「あ、これあたしの親だわ」と正直思った。でも、責めたいわけじゃないの。恨み言を言いたいわけでもない。
ただ、夫を見ていると、どうしても考えてしまう。
夫は自分の両親のことを心から尊敬している。それを聞いたとき、正直、うらやましかった。どうしてあたしは同じように思えなかったんだろう?夫の家とあたしの家、何が違ったんだろう?
夫は、「親がケンカしてるのなんて、1回しか見たことないよ」と言う。もちろん、実際はもっとあったかもしれないよ。でも、夫の記憶には「1回」しか残ってない。
一方のあたしはというと、それはもう数え切れない。空気の重さ、母の言葉のトゲ、ドアの開け閉めの大きな音、全部、毎日のように感じてた。
母は常に誰かの悪口をあたしに言っていた。父の悪口、祖母の悪口、叔母やいとこの悪口。あたしはそれを子どもの頃からずっと聞いてきた。ずっと聞き役で受け取らされてきた。
結婚して家を出てからもそれは続く。電話口で延々と父の悪口を聞かされたあと、最後には「こんなこと、恥ずかしいから絶対旦那さんに言っちゃだめよ」と釘を刺される。
いやいや、そんな大荷物をあたしに背負わせないでほしいのよ。誰にも言っちゃダメって言われた瞬間、心の中のスペースが全部潰される。
だからなんだと思う。あたしの頭の中に母が常にいる理由。優しさではなく、愛でもなく、ただ処理しきれない母の感情の残骸が、ずっとそこにいる。
でも、書きながら思う。この呪いみたいな重さを、あたしはもう娘に渡さない。その連鎖を、あたしのところで終わらせる。あたしの世代で、止める。
それが、あたしが母から「受け継がない」と決めたもの。


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