きのう「市谷の杜 本と活字館」へ行ってきた。
あたし、やっぱり「字」が好きなんだって思った。活字の世界に惹かれる。
展示を見ながら、ひとつひとつの工程を追っていく。作字、鋳造、文選、植字、印刷、製本。どの場面もため息が出る。
原稿に合わせて活字を拾う「文選」の工程は、めちゃくちゃ興味があるところ。何千もの活字の中から必要な文字を選んでいくその作業は、まるで言葉を選び取るよう。その重みだよね。マジすごいわ。
「植字」も、本当に美しい職人技だと思う。拾った活字を指定されたページの形へと組み上げる作業は、まさに熟練の手わざ。ひとつひとつの活字が整然と並んでいて、まるで小さな街みたい。
そして、製本。これはもう、完全にロマン。バラバラだったページが一冊の本として束ねられていく工程は、まるで命が吹き込まれるみたい。
20代のころ、カリグラフィーにどっぷりハマっていた時期がある。専用のペン先を選んで、インクの濃淡を見ながら、ゆっくり、ゆっくり線を引いていく時間がたまらなく好きだった。
角度を少し変えるだけで、線の太さも表情も変わる。「書く」というより「描く」に近い感覚。アルファベットひとつでも、その日の気持ちや呼吸でまったく違う形になる。まるで、自分の内側を写しているみたいで。
机の上に広がるインクのにおい、紙の手触り、静かな時間の中に「字の音」がある。その世界が、あたしにはとても心地よかった。
活版印刷を見ていたら、その感覚を思い出したの。カリグラフィーも活字も、どちらも「字を美しく整える技」だけど、その奥にはちゃんと人のぬくもりがある。
最近ブックライティングの仕事をしているせいもあって、「本を作る」重みをあらためて感じた。
今はデジタルの時代。だけど、こういう手で作る世界を感じると、根っこの部分が整う気がする。
あたし、やっぱり字が好き。
書くことも読むことも、そして、字そのものの姿を見つめることも。


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